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(数学)0除算の別証明

数学

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161103_00

 普通は「乗法逆元が存在しないから」で十分なわけですが, 別証明の指摘が某質問サイトで触れられていたのでちょっと取り上げたいと思います.

 

[Contents]
 

 

除法の原理

 除法の原理とは以下のことですね.

 

[定理:除法の原理]

 任意の整数 { \displaystyle a, b\,(b\neq 0) } について,

 

{ \displaystyle a=bq+r,\,\quad 0\leq r\lt |b| }

 

を満たす整数の組 { \displaystyle (q, r) } がただ一つ存在する.

 

[除法の原理の証明]

 整数全体を { \displaystyle b } の倍数, つまり

 

 { \displaystyle \dots, -3b, -2b, -b, 0, b, 2b, 3b,\dots }

 

で区切れるのは明らかです, そして任意の整数はこの区切った区間のうちただ一つに入ることもまた明らかですね, つまり任意の整数 { \displaystyle a } はある整数 { \displaystyle q } を用いて

 

{ \displaystyle qb\leq a\lt (q+1)b }

 

を満たします.

 ここで { \displaystyle r:=a-qb } と置くと, { \displaystyle r } は上の不等式から { \displaystyle 0\leq r\lt b } であり, また

 

{ \displaystyle a=bq+r }

 

が成り立っています.

 従ってまず { \displaystyle a=bq+r } となるような組 { \displaystyle (q, r) } が存在することは分かりました.

 


 

 次に一意性ですが, このような組 { \displaystyle (q, r) } が同じ条件でもう一組存在すると仮定して矛盾を導きます.

 

 仮定より, 同じ { \displaystyle a, b } に対して { \displaystyle q, r } とはそれぞれ異なる整数 { \displaystyle q', r' } が存在して

 

{ \displaystyle a=bq'+r',\,\quad 0\leq r'\lt |b| }

 

を満たしているとします.

 ここで { \displaystyle a=bq+r } と { \displaystyle a=bq'+r' } を辺々引くと

 

{ \displaystyle 0=b(q-q')+r-r'\\ \Leftrightarrow b(q-q')=r'-r }

 

となるため, { \displaystyle r'-r } は { \displaystyle b } の倍数であることが分かります.

 しかし { \displaystyle r, r' } は,

 

{ \displaystyle 0\leq r\lt |b| \\ 0\leq r'\lt |b| }

 

ですから, { \displaystyle 0\leq |r'-r|\lt |b| } であることは間違いありません.

 { \displaystyle r, r' } は共に整数ですから { \displaystyle r'-r } も整数であり, これを満たすならば { \displaystyle r'-r=0 } しかありえません.

 

 よって { \displaystyle r'=r } であり, { \displaystyle b(q-q')=r'-r } に代入して { \displaystyle q'=q } であることも同時に分かります.

 { \displaystyle q'=q }, かつ { \displaystyle r'=r } であることは仮定である「同じような組 { \displaystyle (q, r) } がもう一組存在する」に反しますので, 仮定が間違っていたことになります.

 

 従ってこのような組は { \displaystyle 0\leq r\lt b } の条件下ではただ一組のみ存在することが分かりました. { \displaystyle \square }

 

 

0除算が不可能である証明(別証明)

 では証明に入りましょう.

 

[0除算が不可能であることの別証明]

 0除算が可能であると仮定して矛盾を導くことで証明します.

 除法の原理で { \displaystyle b=0 } とすることにより

 

{ \displaystyle a = 0q + r\,\quad 0\leq r\lt |0|=0 }

 

となる整数の組 { \displaystyle (q, r) } がただ一つ存在するはずです.

 

 しかし { \displaystyle 0\leq r\lt 0 } なる整数 { \displaystyle r } など存在しません.

 従って仮定が誤りであるということになります. { \displaystyle \square }

 

 …というわけで, 除法の原理からあっさりと証明できてしまいました.

 

 

 

落とし穴

 しかしここには致命的な問題が存在します.

 

 { \displaystyle b=0 } としている部分ですね.

 

 { \displaystyle b=0 } としてしまうと, 除法の原理の証明の初っ端にやっている「整数の, { \displaystyle b }の倍数による類別」が行えないからです.

 従って { \displaystyle b=0 } としてしまった以上除法の原理もなにもないわけですが, 敢えて認めた上で証明するならばこうするのが無難でしょうね.

 

 逆に言えば, これは除法の原理でなぜ { \displaystyle b\neq 0 } としなければならないのか…の意味づけとなります.

 

 そういう意味では, 除法の原理を用いて証明するならば除法の原理より { \displaystyle b=0 } とできないことを根拠にすることが可能でしょう.

 然らば証明はもっとスッキリしますね.

 

 

 このように一つの結論を導く証明というのは一通りとは限りません.

 「今」一通りなのは本当にそれしかないか, 或いは「まだ誰も思いついていないだけ」です.

 とっくに知られた定理でも, アプローチを変えて色んな証明を考えるのも数学の醍醐味です.