もう一人のY君

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(数学)公理、定義、定理, 公式などなど

161022_07

 今回は定義や定理などの数学用語の簡約です.

 ご存じの方にはトリビアルな話ですが, 意味を取り違えて使用している生徒・学生の方々も居ますので念の為.

 

[Contents]
 

 

公理(Axiom)

 公理とは, 議論の結論を得るための大前提のことです.

 そのため明らかに自明であるものが多いです.

 

例:

  • 任意の自然数について, その次の自然数が存在する
  • 任意の2点について, これを結ぶ直線を引ける

 

 公理は対象の体系において適用されれば十分であり, 従って類似する体系で別の公理が存在しえます.

 

 

定義(definition)

 ある概念を導入する際に用いられる「約束事」です, ルールみたいなものですね.

 一般に議論を(良い意味で)制限するものであり, 定義が自己矛盾を起こしていなければそれをwell-definded, 或いは「うまく定義されている」「定義可能」などと言います.

 例えば

 

{ \displaystyle a := \lim_{n\to 0}f(a_n),\quad a\in\mathbb{R} }

 

とした場合, { \displaystyle a } は必ずしも収束するのか, ただ一つ存在するのか分かりませんから, それを確かめなければいけないことになります.

 

 

命題(proposition)

 命題とは, それが真(正しい)であるか偽(正しくない)であるかがはっきりしている言明のことです.

 

 

述語(predicate)

 例えば { \displaystyle 5\gt 0 } は真ですが, { \displaystyle x\gt 0 } はこの時点では真偽を判別することはできません.

 このように不定元などに具体的な値を代入することによってはじめて真偽が定まるものを述語と言います.

 

 

演繹的推論と帰納的推論

 演繹的推論とは, 仮定と規則から結論を導く推論です.

 いくつかの仮定, 公理, 定義, 或いは証明済みの定理などを用いて, 何らかの結論を導きます.

 

 大して帰納的推論は, 複数の結論から一定の法則を導く推論です.

 物理や科学などで, 実験を重ねて何らかの研究結果や法則を発見するのはまさにこの帰納的推論です.

 

 よく数学はこの前者, 物理科学はその後者と思われがちですが現代では必ずしもその傾向に無く, 寧ろ相互の関わりも重要視されています.

 

 

定理(theorem)

 定理とは, 「証明された真の命題」のことです.

 ただ命題を挙げても, 証明されていなければ定理であるとは限りません.

 

 

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証明(proof)

 証明とは, 「仮定の取り除かれた演繹」と意味します.

 具体的には, 必要な公理・定義・証明済みの定理などを駆使し, 演繹的推論を用いて結論へ導くものを言います.

 この際, 得られた結論はそれ自身が何の仮定も無しに成立, 真でなければなりません.

 例えば

 

{ \displaystyle (A\to B)\to B }

 

という命題では, { \displaystyle A } の真偽がハッキリしていません.

 

{ \displaystyle (A\land A\to B)\to B }

 

であれば, この結論の真偽に必要な仮定は不要です.

 従ってこれに至る演繹は証明であることが分かります.

 

 

補題(lemma)

 証明の箇所にも触れた, 証明を行う際に用いる別の定理を, 自身と区別してその場に限り「補題」と呼び分けることがあります.

 

 

系(corollary)

 系とは, ある定理から自明に導かれる定理のことを言います.

 

例:

  • 余弦定理に対する三平方の定理

 余弦定理, つまり三角形ABCの3辺の長さ { \displaystyle \text{BC}=a,\text{AC}=b,\text{AB}=c }{ \displaystyle \angle A=\theta } について

{ \displaystyle a^2=b^2+c^2-2bc\cos\theta }

, ここで { \displaystyle \theta=\frac{\pi}{2} } とすれば三平方の定理

{ \displaystyle a^2=b^2+c^2 }

となる.

 

  • オイラーの定理に対するフェルマーの定理

 オイラーの定理, つまり { \displaystyle \gcd(a, m) } なる整数 { \displaystyle a, m } について,

{ \displaystyle a^{\varphi(m)}\equiv 1\pmod m }

, ここで { \displaystyle m=1 } とすればフェルマーの定理

{ \displaystyle a^{p-1}\equiv 1\pmod p }

となる.

 

 従って系は相対的な存在となります.

 

 

公式

 定理のうち, 数式を用いたものを言います.

 Wikipediaにある通り, 転じて「問題を簡単に解決できる魔法のようなもの」の意味で使われることがあり, 更にそれが曲解して「これさえ暗記すれば大丈夫」の代名詞として使われている気があります.

 その旨もwikiで触れられていますね, 暗記教育は本来有益な教育法ですが現代のそれは本来のものとはかけ離れたものとなってしまっています.

 

 

 それぞれの違いが分かりますでしょうかね?