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iPhoneアプリのレビューやアップデートレビューなどを書いています. たまに数学の記事も書きます.

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(数学)素数の定義における1の扱い

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 当たり前と思ってることは必ずしもそうとは限りません.

 

[Contents]
 

 

一般的な素数の定義

 一般的に, 素数は以下のように定義されます.

 

[定義1:素数]

 自然数 { \displaystyle m } について, その正約数が { \displaystyle 1 } と自分自身以外に存在しないとき, これを素数と言う.

 

 そしてこれだと { \displaystyle 1 } は素数と言えます. 

 

 

素因数分解における問題

 しかし { \displaystyle 1 } を素数として認めると, 素因数分解の一意性に反してしまいます.

 従って素数は実際には次のように定義されます.

 

[定義2:素数]

 自然数 { \displaystyle m } について, その正約数が { \displaystyle 1 } と自分自身以外に存在しないとき, これを素数と言う.

 但し { \displaystyle 1 } は素数でないとする.

 

 しかし, 素因数分解の一意性を知っている我々にとってはそれで納得行くものの, 順当に学ぶ上ではそもそも素数を学んだ時点で素因数分解の一意性はまだしも, 素因数分解自体を学んでいません(そう遠くない将来学ぶとはいえ).

 

 従ってそれ自体は問題ないものの, その時点で「なぜ { \displaystyle 1 } を含めないのか」という問いに, 我々は納得する答えを出すのに苦慮することになります.

 

 素因数分解というものは素数の定義があってはじめて議論できるはずなのに, その定義の中で素因数分解に触れるというのは, なんともおかしな話です.

 

 

素因数分解の一意性に依存しない定義

 よって, こうした巡回論法めいた定義でない定義が求められるべきです(結果的に同値であるにしろ).

 

 実際には以下になります.

 

[定義3:素数]1

 非負整数の正約数を考えるとき, 大きく

{ \displaystyle 0,\quad 1,\quad 1 }より大きい自然数

 に大別される.

 

 まず { \displaystyle 0 } は, 任意の整数 { \displaystyle n } について

{ \displaystyle 0=0n }

を満たすので, { \displaystyle 0 } を除く任意の自然数を正約数に持つ.

 

 次に { \displaystyle 1 } は唯一 { \displaystyle 1 } しか正約数を持たないので, ただ一つの正約数を持つ数と言える.

 

 自然数 { \displaystyle m\quad (1\lt m) } は, 必ず { \displaystyle 1 } と自分自身 { \displaystyle m } の2つの正約数を持つ.

 この2つの正約数を自明な約数と呼ぶ. 

 また { \displaystyle m } の正約数のうち, 自明な約数でない正約数を真の約数と呼ぶ.

 このとき, { \displaystyle m } が真の約数を持たないとき, { \displaystyle m }素数, 真の約数を持つとき, 同じく合成数と呼ぶ.

 

 この定義3によれば, 素因数分解の一意性を持ちこまずとも, { \displaystyle 1 } は真の約数を持たないことによって素数でないことが分かります.

 

 

 2つの定義の明確な違いは, 素数を定義するに当たって扱う対象が自明な約数の方か, はたまた真の約数の方か…とも言えます.

 2語の定義の通りこれは相対する関係ですから, 2つの素数の定義は, { \displaystyle 1 } の扱いを除いて同値であることが分かります.

 

 

 1 : 共立出版株式会社「初等整数論講義 第二版」