今日は二項定理を使ったn乗根近似のお話です.
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二項定理とは
通常, 二項定理とは二項係数
における
…
であることはよく知られています.
これは応用すれば整数でなくとも有理数や複素数にまで拡張が可能です.
特に上で を
に,
を
に置き変え, 更に
は
を満たす複素数とすれば
とできます.
ですから,
は
が大きくなるにつれ十分無視できます, つまり近似式として使えるわけです.
複素数を扱うため, 通常の二項係数でなく言うなれば「一般二項係数」として評価します.
[定義:一般二項係数]
複素数 と非負整数
に対して,
断りが無ければここではこれを二項係数と呼ぶことにします.
従って上の等式も次のように書き換えられます.
更に言うと, 一般二項係数を利用すれば上記で を
までで止め置く必要もありません, つまり
としてしまっても問題ありません.
また複素数で扱う場合は実際には二項係数でなく「ポッホハンマー記号」と名を変えますが, その意味する所は似ています.
[定義:ポッホハンマー記号]
複素数 と非負整数
について,
2つありますがどちらも同じ呼び名のようです, また記号も参考書によっては違う可能性があります.
一般二項定理による近似公式
上記の一般二項定理とポッホハンマー記号をうまく組み合わせることで, 次の等式を得ます.
[近似公式]
例えば とすれば
という有名な近似式が, また とすれば
…と言う風に求めることができます.
これらを上手いこと使って具体的な近似式を作っていくわけです.
√2の場合
まずは で試してみましょう.
工夫を要するんですが以下のようになります.
となるので,
となります.
実際 ですから正しい十分近い数であることが分かります.
その他
他の例を見てみましょう(分かる範囲でのみやってます).
√3のとき
より,
[実際の値]
√5のとき
より,
[実際の値]
√6のとき
より,
[実際の値]
√7のとき
より,
[実際の値]
√8のとき
より,
[実際の値]
√10のとき
より,
[実際の値]
近いものもあればかなり精度の低いものまで様々です.
なお,
となる
を見つけるためには,
の部分が
という形になるよう選ぶと良さそうです.
また計算の手間上, の部分はできるだけ小さい方が良いです.
実際にはそう都合よく行きませんが.
上手いこと式を見つけても, 結果的に手間がかかる場合もあります.
試しに立方根についてもやってみましょう, こちらはもっと精度が悪く, 手間もかかります.
平方根とはまたテクニックも違ってきます.
2の立方根のとき
より,
[実際の値]
4の立方根のとき
より,
[実際の値]
5の立方根のとき
より,
[実際の値]
これ以上は考えるのはしんどいので限界でした^^;
暇な方は試してみてください.
[参考] 日本評論社「数学セミナー 2013年3月号 特集『二項定理を深く学ぼう』」