もう一人のY君

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【数学】確率が1であること(ほとんど確実に)

mathematics almost everywhere a.e.

 確率が { \displaystyle 1 } , つまり { \displaystyle 100}% となる事象は色々あります.

 それに関わる事象・確率によっては特別な呼び方・扱い方があります.

 

 

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確率が1であるということ

 我々が普段扱う対象は有限であるものが多く, 仮に実際は無限であったとしても有限に落とし込んで考えれば問題ないことが多いです.

 

 しかし数学, 現代数学ではその縛りに拘ることなく, 考えうるできるだけ大きな世界(空間)からものを見るものです.

 

 

ほとんど確実

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 測度論の基本については過去に紹介した通りです.

 

 測度空間 { \displaystyle (S,\Sigma, \mu ) } における { \displaystyle \Sigma } の要素 { \displaystyle F } (確率で言うところの「事象」)を用意します.

 

 このとき, { \displaystyle S } の点 { \displaystyle s } に関する命題 { \displaystyle \mathcal{S(s)} }ほとんど確実 { \displaystyle \left(\text{almost surely} \,\text{(a.s.)}\right) }, もしくは確率 { \displaystyle 1 } で真であるということを次によって定義します.

 

  • { \displaystyle F:=\left\{s\, |\, \mathcal{S}(s) \text{は真} \right\}\in\Sigma }
  • { \displaystyle \mu(F)=1 }

 

 基本的には確率空間で使うことが多いです.

 

 

 この用語が価値を持つのはまさに「無限」に関わる際であることが多いです.

 

 例えばサイコロを投げる試行において, { \displaystyle 1000000000=10^{10} } 回投げるとします.

 このときすべて{ \displaystyle 1 }の目である確率は { \displaystyle 6^{-1000000000}\approx 4.13386\times 10^{-778151251} } という途方もなく小さな確率ですが, { \displaystyle 0 } ではありません.

 従ってこの偽命題である「2から6の目が出る」はほとんど確実…とは言えません.

 

 これを無限回試行すればその確率は { \displaystyle 0 } ですから, この場合は「ほとんど確実」に2から6の目が出ることになります.

 

 

 また例えば実数閉区間 { \displaystyle [0,1] } から等確率で実数を一つ選ぶ試行を考えます.

 このとき例えば { \displaystyle 0.1 } が選ばれるかもしれませんが, ご存知の通り有理数はもちろん無理数は無限個存在しますから, その確率はどれを対象としても { \displaystyle 0 } となります.

 従ってこの場合「ほとんど確実に { \displaystyle 0.1 } でない実数が選ばれる」ことになります.

 

 

 ようは確率の世界では「絶対」という言葉を避け, こちらを使うんですね.

 例に挙げた通り, 無視できるとはいえ { \displaystyle \mu(F)=0 } となる命題 { \displaystyle F } が存在し得ることを想定しているのです.

 

 ちなみにそっくりな定義でほとんどいたるところ { \displaystyle \left(\text{almost everywhere} \,\text{(a.e.)}\right) } という用語もあります.

 

  • { \displaystyle G:=\left\{s\, |\, \mathcal{S}(s) \text{は偽} \right\}\in\Sigma }
  • { \displaystyle \mu(G)=0 }

 

 

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 また「測度ゼロ」の集合が存在すること, その一つが一点集合であることは先日紹介した通りです.