もう一人のY君

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もう一人のY君

iPhoneアプリのレビューやアップデートレビューなどを書いています. たまに数学の記事も書きます.

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マイナス×マイナス=プラスの証明

 こんにちは, @the_theorierです.

 

 今回はタイトルの通りです.

 自分は「算数として説明」するのは苦手ですし, ましてそれは「証明ではない」ですから, ちゃんとした証明を書いておくことにします.

 前に○だけ進むだとか, そういうのは「説明」に過ぎないということです, 求められる前提次第ではそれは証明にはなりません.

 因みにこれも別サイトの焼き直しです, 見やすいページで見た方が良いよね…(´・ω・`)

 

 因みにこれを「定義」だと思ってるトンデモな人もちらほらと居ました, いやぁ凄いですね色んな意味で.

 

準備

 取り敢えず最低限抑えたい点だけ述べておきます, これは数体系の根本, つまり定義や公理に相当するものです.

 とはいってもそれなりにちゃんと書くので, 面倒な方は証明まで進んでください.

 代数学に触れている方には基本中の基本ですね.

 まず何よりこれから定理を証明するための大元である「空間」を定めておきます.

 代数学の言葉で言えば環(=ring)であれば十分でしょう, よく分からない方は整数や有理数, 実数, 複素数全体の集合のいづれかを頭に浮かべれば良いです(複素数だとマイナスとかプラスのイメージが崩れかねませんけどね).

 兎も角集合として{ \displaystyle G }を与えます(但し{ \displaystyle G\neq \emptyset , \emptyset }空集合).

 

2元演算

 { \displaystyle G }による直積 { \displaystyle G\times G } から { \displaystyle G } への写像

{ \displaystyle G\times G → G }

{ \displaystyle (a, b) \mapsto c }

が存在するとき, その作用を一般に*と表し, * を{ \displaystyle G }の2元演算と呼ぶ.

 またこのとき { \displaystyle c = a*b } と表し, 「c は a と b の積」であると言う.

(ここで言う「積」は, 掛け算の「積」ではなく, 四則演算もそれ以外の演算もひっくるめた, 一般化された表現です)

  また集合{ \displaystyle G }とその2元演算の組 { \displaystyle (G, *) } を亜群(groupoid)と呼ぶ.

 { \displaystyle (G, *) } は, しばしば { \displaystyle G } と省略されます, つまり我々が当たり前に自然数だ整数だ何だと言っているのは, 演算が定義されていない単なる数の集まりでるか, 或いは2元演算も定められている代数系であるかのどちらかとなります.

  亜群はすべての代数系の根幹です.

 

結合律

 亜群 { \displaystyle G } の2元演算 { \displaystyle * } が次の結合律を満たす時, { \displaystyle G } は半群(semigroup)であると言います.

 

{ \displaystyle (a*b)*c = a*(b*c), (\forall a, b, c\in G) }

 

単位元

 半群 { \displaystyle G } の任意の元 { \displaystyle a } について

 

{ \displaystyle a*e = e*a = a }

 

を満たすような元{ \displaystyle e }が, { \displaystyle G } の中にただ一つ存在するとき, { \displaystyle G } はモノイド(monoid)或いは単位的半群(unitary semigroup)と言います.

 我々の日常ではあり得ませんが一般に単位元は0とは限りません, 従って0と区別するために { \displaystyle 0_{G} } と書くことがあります.

 例えば { \displaystyle a+0 = 0+a = a } ですが, 0は正整数ではありませんから, 自然数(=正整数とした場合)はモノイドにはなれず, 半群止まりになります.

 なので0を含めて非負整数にすると, 半群からモノイドになれるわけです.

 

逆元

 モノイド { \displaystyle G } の任意の元 { \displaystyle a } について

 

{ \displaystyle a*a' = a'*a = e (e }{ \displaystyle G }単位元)

 

を満たす{ \displaystyle G }の元{ \displaystyle a' }が, { \displaystyle a }に応じてただ一つずつ存在するとき, { \displaystyle G } は群(group)と呼ばれます.

 このとき { \displaystyle a' } を { \displaystyle a^{-1} } と表します.

 

可換律

 群 { \displaystyle G } が次の可換律を満たすとき, { \displaystyle G } は可換群, 或いはアーベル群(abelian group)と呼ばれます.

 

{ \displaystyle a*b = b*a (\forall a, b\in G) }

 

 参考書によっては, このアーベル群のことを群とする場合もあります.

 

 また2元演算 * が乗法である群を乗法群(multiplicative group), 同じく加法である群(但しこちらは可換群である必要があります)を加法群(additive group)と呼びます.

 

環と分配律

 群は, 2元演算を1つ持つ代数系ですが, 環は2つの2元演算, 具体的には加法と乗法に相当するものが定められた代数系です.

 加法群 { \displaystyle R } に, 次のような乗法{ \displaystyle ab (= a\times b) }が定められたとき, { \displaystyle R (= (R, +, \times)) }を環(ring)と呼びます.

   (1)乗法×が結合律を満たす, つまり { \displaystyle (R, \times) }半群である

   (2)加法と乗法との間に次の分配律が成り立つ

 

{ \displaystyle (a+b)\times c = ac + bc }

{ \displaystyle a\times (b+c) = ab + ac }

 

 { \displaystyle \{ 0\} }は自明な環であり, 特別に「零環」と呼ばれ, これを環から取り除いて議論することがよくあります.

  また{ \displaystyle \{ 0\} }でない環 { \displaystyle R } が単位元を持つとき, { \displaystyle R } を単位的環(unitary ring)と呼びます.

 参考書によってはこの単位的環のことを環とする場合があります.

 

 他にも環の種類はありますが今回とは関係ありませんので省略します.

 

 

証明

 ではさっそく証明に入ります.

 準備で余計なことまで書いてしまいましたが, 要は「単位元」, 「逆元」, そして「分配律」がキーとなります.

 

Thm1

{ \displaystyle R }の任意の元{ \displaystyle a }について,

{ \displaystyle (a^{-1})^{-1} = a }.

 

Thm1 の証明

  逆元の定義

{ \displaystyle a*a-{-1} = a^{-1}*a = e  (i) }

{ \displaystyle a } は任意ですから, { \displaystyle a^{-1} } に置きかえると

{ \displaystyle a^{-1}*(a^{-1})^{-1} = (a^{-1})^{-1}*a^{-1} = e  (ii) } 

 となります, (i) (ii) の各項はすべて { \displaystyle e } に等しいですから, 必要なものを取ってきて

{ \displaystyle a^{-1}*a = a^{-1}*(a^{-1})^{-1} }

が言えます, 両辺に左からaを乗じれば, 逆元の定義より

{ \displaystyle a*a^{-1}*a = a*a^{-1}*(a^{-1})^{-1} }

{ \displaystyle ⇔ e*a = e*(a^{-1})^{-1} }

{ \displaystyle ⇔ a = (a^{-1})^{-1} }

となります. //

 

 

Thm2

  環{ \displaystyle R }の任意の元{ \displaystyle a }について

 

{ \displaystyle 0a = a0 = 0 }.

 

({ \displaystyle 0_{R} }とすべきですが省略します, 以下同様)

 

Thm2 の証明

 分配律より,

{ \displaystyle 0a+0a = (0+0)a = 0a } (右は単位元の定義より)

, つまり

{ \displaystyle 0a+0a = 0a }

となります, この両辺の左右どちらでも良いですが片方に{ \displaystyle 0a }の加法逆元を加えれば

{ \displaystyle 0a = 0 }

を得ます, { \displaystyle a0 = a } も同様になります. //

 

 

Thm3

 環{ \displaystyle R }の任意の元{ \displaystyle a, b }について

{ \displaystyle (-a)b = a(-b) = -ab }.

 

Thm3 の証明

 環{ \displaystyle R }の分配律より,

 

{ \displaystyle ab + (-a)b }

{ \displaystyle = (a+(-a))b }

{ \displaystyle = 0b }  (単位元の定義より)

{ \displaystyle = 0 }  (Thm2より)

 

  この両辺にabの加法逆元 -ab を加えれば

 

{ \displaystyle -ab+ab+(-a)b = -ab+0 }

{ \displaystyle ⇔ 0+(-a)b = -ab }  (逆元の定義と単位元の定義より)

{ \displaystyle ⇔ (-a)b = -ab }  (単位元の定義より)

 

となります, { \displaystyle a(-b) = -ab } も同様に導かれます. //

 

 

Thm4

 環{ \displaystyle R }の任意の元{ \displaystyle a, b }について

{ \displaystyle (-a)(-b) = ab }.

 

 

Thm4 の証明

{ \displaystyle (-a)(-b) }

{ \displaystyle = -(-a)b }  (Thm3 より)

{ \displaystyle = \{-(-a)\}b } (Thm3 より)

{ \displaystyle = ab }. //  (Thm1 より)

 

Corollary

 任意の自然数{ \displaystyle a, b } について

{ \displaystyle (-a)(-b) = ab }.

 

 これが今回知りたかったことですね, 自然数は整数環の真部分集合ですから, 任意の元についてThm4が使えます, 従ってマイナスとマイナスをかければプラスになることが分かりました. //

 

 

 

 前置きを敢えて堅っ苦しく長々と書いてるだけで, やってることは中学生でも分かることです.