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iPhoneアプリのレビューやアップデートレビューなどを書いています. たまに数学の記事も書きます.

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【数学】議論している「空間」を明確にする

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 某質問サイトを見ていると, 的外れなやり取りを見かけます(僕もやらかしたりしますが).

 

 

それは「どういう相手」に沿ったやり取りか

 その最たるは例えば

 

  • 0は自然数か
  • 0や負数は倍数, 約数に含めるか

 

といった質問, 議論です.

 

 ある人は「0は自然数じゃない」と言い, また別の人は「いや0は自然数だ」と言います.

 

 結論から言うと「どちらも正しい」ので双方引くことはありません, 「そんな必要ない」ですから.

 

 しかし答えを求めている側からすれば, そして何らかの立場から考えれば答えは一つのはずです, 従ってこのままでは解決しません.

 

 

空間

 物理などのそれとは意味が異なるこの「空間」とは, 対象(数や集合などなど)やそれを用いた演算等々を扱うための, はじまりの集合のことです.

 

 例えばある関数のグラフを考えましょう.

 一般的に関数と言えばほぼ無条件で実数から実数までの関数

 

{ \displaystyle f:\mathbb{R}\to\mathbb{R} }

 

を意味します

 この場合「空間」は { \displaystyle \mathbb{R} } であることは間違いありません.

 

 しかしこれが例えば対数関数 { \displaystyle \log_a{x} } なら…三角関数 { \displaystyle \sin{x} } ならどうでしょう?

 

 当然 { \displaystyle \mathbb{R}\to\mathbb{R} } として構いませんが, 双方それぞれ

 

{ \displaystyle (0 ,\infty)\to\mathbb{R} \\ \mathbb{R}\to [-1,1] }

 

として議論しても構いません.

 

 このとき, 省略した箇所を想定して議論するのか, 端折ってしまうのか…

 「それを知っている」立場であればそんなこと些細な話ですが, そうでない相手とやり取りする際にそれを断わっておくのとそうでないのでは万が一の時の手間が違います.

 

 

 何かに触れる際, その空間を指定することは当たり前のように思えてしかし重要なことです.

 

 

空間が違うと答えが違うことがある

 「空間を指定せずに」, 2つ例を挙げてみましょう.

 

 

[問題1]

 { \displaystyle x^4-1 } を因数分解せよ.

 ある人は

 

{ \displaystyle (x+1)(x-1)(x^2+1) }

 

を答えとし, また別の人は

 

{ \displaystyle (x+1)(x-1)(x+i)(x-i) }

 

とするでしょう(項の順番はここでは考えません).

 

 そしてどちらも「正しい」です.

 

 間違っているとすれば「どこまで因数分解すべきか」が問題文に欠けているから, 或いは「出題先がどういう立場であるか」です, 中学生向けか, 高校生か, 大学か…等々.

 

 そのいづれかが明確であれば, おのずと一方が正解となるのは明らかです.

 

 

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[問題2]

 { \displaystyle x^2+8x+15 } が素数となるような整数 { \displaystyle x } を求めよ.

 { \displaystyle x^2+8x+15 } は因数分解すると

 

{ \displaystyle (x+3)(x+5) }

 

と, { \displaystyle x+3 }{ \displaystyle x+5 },  2項の積になります.

 これが素数になるには, 一方の項が { \displaystyle 1 }, 或いは { \displaystyle -1 } であることが必要条件です.

 

[{ \displaystyle x+3=1 } のとき]

 このとき { \displaystyle x=-2 } ですから

 

{ \displaystyle (-2+3)(-2+5)  =3 }

 

, これは素数です.

 

[{ \displaystyle x+3=-1 } のとき]

 このとき { \displaystyle x=-4 } ですから

 

{ \displaystyle (-4+3)(-4+5)=-1 }

 

, これは素数ではありません.

 

[{ \displaystyle x+5=1 } のとき]

 このとき { \displaystyle x=-4 } ですから前回の場合と同じです.

 

[{ \displaystyle x+5=-1 } のとき]

 このとき { \displaystyle x=-6 } ですから

 

{ \displaystyle (-6+3)(-6+5)=3 }

 

, これは素数です.

 

 以上より { \displaystyle x=-6, -2 } が答えとなります.

 


 

 さて, ここで当たり前に因数として { \displaystyle -1 } であることを想定しています.

 掛け算の立場で考えれば正整数 { \displaystyle a, b } について { \displaystyle (-a)(-b)=ab } であることは過去に学んだことでしょうが, となると問題になってくるのが「負の倍数, 約数」です.

 

 負の倍数, 約数を否定してしまうと, 今回の問題であれば { \displaystyle x=-6 } の解は得られないわけです.

 

 勿論ここには「約数と因数では立場が違う」などの異論もあるため, 負の倍数, 約数については今もなお議論されています.

 

 

 そもそものこういった問題は, 教育課程上の問題で「既知であるより拡張された体系」を教えることができないこと, そしてそれ以上に「その時点での学びで固定されてしまうこと」です.

 あたかも自然数は必ず1からでないといけないとか, 負数で倍数・約数を扱わないというのは飽くまでも「今学んでいる時点でのこと」であり, 然るべき空間では当然のように受け入れられています.

 

 「今」に従うのはそれはそれで良しとしても, 「それがすべて」であると決め込むのは誤りであり, 勿体ないことです.

 

 極端に言えばそれは三平方の定理を学んで余弦定理に目を向けない, 或いは複素数の世界を知らかった頃の「二次方程式の非実数解の扱い」のようなものです.

 

 より極端に言えば, 学校で学ぶ数学など, それこそ「数学を端折ったもの」に過ぎません.

 つまり「まだ先がある」のです.

 

 だからこそ, 今一体どんな「空間」の下で議論しているのか…が重要になってくるのです.

 そうでなくとも重要ですが.