もう一人のY君

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【数学】等しいということ

math equal

 先日は「等しい」と「同じ」の違いに触れましたね.

 今回は等しいという意味について考えます.

 なお, 「等式」の意味での「等しい」になります.

 

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等しいとは

 より根本のそれは数同士の等式関係でしょう, つまり二つの数 { \displaystyle a,b } が等しいということを我々は一般的に

 

{ \displaystyle a=b }

 

と書きます.

 

 

等式の性質

 等式については例えば以下のような性質をイメージすることでしょう.

 

  • { \displaystyle a=a }
  • { \displaystyle a=b\Rightarrow b=a }
  • { \displaystyle a=b\Rightarrow a±c=b±c }
  • { \displaystyle a=b\Rightarrow ac=bc }

 

 小学校までであれば互いの数が, あるいは計算結果が等しければ { \displaystyle = } で結べばOKでした.

 中学になり関数や図形, 証明に触れ, 「等しい」ということがただ数同士に用いるものとは限らないことを知るようになります.

 

 対象によって「等しい」にも色々あることを否応にも理解せざるを得なくなります.

 

 

集合

 集合と次に挙げる関数は現代数学に必須のアイテムですね.

 集合で言う「等しい」は数のそれとは意味が異なります, つまり二つの集合 { \displaystyle A,B } について, 互いに一方の元が他方の元であることを言います.

 言いかえれば次の二つが成り立つことを言います.

 

  • { \displaystyle \forall x\in A \Rightarrow x\in B }
  • { \displaystyle \forall x\in B \Rightarrow x\in A }

 

 次のように言いかえても良いですね.

 

{ \displaystyle A \subset B } かつ { \displaystyle A \supset B }

 

 

多項式・関数

 多項式 { \displaystyle f(X), g(X) } が等しいとは, 各々を降べきの順に並べたとき, 各々の係数がすべて一致することであり, このとき { \displaystyle f(X)=g(X) }, 誤解がなければ { \displaystyle f=g } と簡略します.

 ご存じの通り多項式(整式でも良いですが)の時点では関数ではないので「値」の話は多項式関数として扱ってからの話です.

 

 そして関数 { \displaystyle f(x), g(x) } が等しいとは, 双方の定義域が等しく, かつ定義域の任意の元 { \displaystyle a } について { \displaystyle f(a)=g(a) } であることを言います.

 このとき { \displaystyle f(x)=g(x) } と書き表し, 多項式と同じように誤解がなければ { \displaystyle f=g } と略記します.

 

 

図形

 二つの図形 { \displaystyle A,B } が等しい...はやや事情が異なります, というのも全く形も大きさも位置も等しい...となると余りにもトリビアルだからです.

 従って

 

  • 拡大・縮小
  • 回転
  • 鏡面(反転)

などによって等しくなるとき, 等しいと見なします.

 しかしここでは一般的に「合同」や「相似」の語が多用され, 誤解がなければ「等しい」を使用します.

 

 あるいは面積によって等しいと定めることもできるでしょう.

 この場合互いの形が別でも構いませんね.

 形や大きさとはまた異なる都合の良さがあります.

 

 逆に言えば同じ対象の等式関係でも, その条件によって全く異なることがあり得ると言うことです.

 

 

同値関係

 対象によっては必ずしも等式関係に縛られることはありません.

 図形の合同はその一つです.

 数に至っても例えば有理数は一つの数を表すのに無限個の表記があります, 即ち任意の有理数 { \displaystyle \frac{a}{b} }{ \displaystyle 0 } でない任意の整数 { \displaystyle k } について

 

{ \displaystyle \frac{a}{b}=\frac{ak}{bk} }

 

が成り立ちます.

 

 これらは表記こそ違えど, ある「ルール」のもとでは共通します. その答えがこの同値関係です.

 

[定義:同値関係]

 集合 { \displaystyle S } について, ある条件 { \displaystyle \sim } が以下を満たすとき, { \displaystyle \sim }{ \displaystyle S } 上の同値関係と言う.

 

 { \displaystyle S } の任意の元 { \displaystyle a,b,c } について,

 

  • (1){ \displaystyle a\sim a }
  • (2){ \displaystyle a\sim b \to b\sim a }
  • (3){ \displaystyle a\sim b, b\sim c \to a\sim c }

 

 ある { \displaystyle a } と同値であるものを集めた類

 

{ \displaystyle \left[a\right] = \left\{ x | x\sim a \right\} }

 

を要素とする集合である商集合

 

{ \displaystyle S\backslash\sim = \left\{ \left[x\right] | x\in S \right\} }

 

が「都合の良い商集合」となります.

 

 我々は同値関係など知ることなく, 分数や有理数において同値関係を用いています.

 

 同値関係における { \displaystyle S } は数を対象とする集まりに限らず, 関数や図形などに置き換えることも可能です, 即ち図形の合同もまた同値関係です.

 

 有名な { \displaystyle 0.999\dots =1 } も, 双方を等しいと見なせば簡単に都合がつきます.

 実のところ極限を使うのは余り勧められません, 工夫すれば「そうならない」ケースを作れる場合があるからです.

 

 

 このように, 対象によって, 下手をすれば同じ対象であっても等式の意味が異なります.

 基本の基本であるはずの等式ですら奥深いものですね.