今回は円に接する正多角形を用いた円周率の近似についてです.
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円周率の歴史
円周率の存在は紀元前から知られており, この円に内接・外接する正多角形を用いた近似法も, 紀元前に活躍したアルキメデスと言われています.
当時は小数以下2桁や3桁といった程度の精度でしたが, 比較的シンプルで計算も比較的用意であるため, より大きな正多角形を利用してより精度の高い円周率を求める手段の一つとして使われてきました.
三角関数や級数といった概念が登場するまではこの手法が殆どで, これらを用いるようになった14世紀辺りに小数点以下10桁を超えます.
現在はコンピュータの恩恵もあり, 三角関数や級数などを用いた式も高速で計算可能なのは言うまでもなく, 2016年の時点では20兆を超える桁まで判明しています.
正多角形を用いた近似
今回は円に内接・外接する正多角形, 特に正 角形を用いた円周率近似を考えてみます.
内接正6角形
まず基本となる正六角形を考えます.
最初に内接六角形を考えましょう.
円は単位円とし,単位円の中心を , 点 は単位円上の点で は内接六角形の頂点, は正六角形の次に考える正十二角形の頂点, 直線 と同 の交点を , 同じく と の交点を とします.
このとき と は共に直角であることは明らかです.
また円は単位円なので の長さは , よって が単位円に内接する正六角形であることから の長さは になります.
単位円に内接する正六角形を用いた円周率「もどき」を求めることはもはやトリビアルでです, 従って最初に求めるべきは同じく正十二角形になります.
正十二角形を用いた円周率「もどき」を求めるには例えば の長さが分かれば十分です.
円周率は「円周÷直径」でしたから, 単位円に内接する正十二角形の円周率「もどき」は
で求まります.
三平方の定理より ですから, , より
でまず が求まります.
より なので, について三平方の定理を適用すると
を得ます.
従って内接正12角形の円周「もどき」 は
となります.
この時点で計算するとおよそ となり, 小数点以下1桁までしか合っていません.
内接正多角形の一般化
上のやり方は次へと全く同じ方法で通用します.
従って内接正 角形として一般化してみましょう.
正 角形 の一辺の長さを とおきます.
但し正6角形との都合を付けるために とします.
このとき, と置き換わるので, に関して
となります.
よって同じく から となり, に関して三平方の定理を利用すると
となります.
従って内接正 角形の円周率「もどき」 は,
によって求まることになります.
外接正多角形の一般化
外接正多角形についても考え方は同じです.
なのでここではいきなり一般化からやってみましょう.
画像のように単位円とその外接する正多角形を考えます.
以降は外接正 角形と書くのが面倒なので と書き表します.
点 は単位円上の点で, 点 は の頂点となります.
直線 は の辺の一部であり, 辺自体の長さを とするならば, となります.
は の一辺に相当し, これは となります.
今回は面積をもとに計算します, まず について三平方の定理を適用すると
となるので
によって が求まります.
面積について
なのでこれにより
を得ます.
なお今回の初期値は となります.
これを用いて円周率「もどき」を計算すると
となります.
実際計算してみる
この2つの数列から, 円周率をある程度近似してみましょう.
なお定義から
であることがわかります.
正多角形 | 内接 | 外接 |
---|---|---|
6(n=1) | 3.105828541230249 | 3.215390309173472 |
12(n=2) | 3.132628613281238 | 3.159659942097500 |
24(n=3) | 3.139350203046867 | 3.146086215131434 |
48(n=4) | 3.141031950890509 | 3.142714599645368 |
96(n=5) | 3.141452472285462 | 3.141873049979823 |
192(n=6) | 3.141557607911857 | 3.141662747056848 |
384(n=7) | 3.141583892148318 | 3.141610176604689 |
768(n=8) | 3.141590463228050 | 3.141597034321526 |
1536(n=9) | 3.141592105999271 | 3.141593748771352 |
3072(n=10) | 3.141592516692157 | 3.141592927385097 |
6144(n=11) | 3.141592619365383 | 3.141592722038613 |
12288(n=12) | 3.141592645033690 | 3.141592670701998 |
24576(n=13) | 3.141592651450767 | 3.141592657867844 |
49152(n=14) | 3.141592653055036 | 3.141592654659306 |
98304(n=15) | 3.141592653456104 | 3.141592653857171 |
この結果から分かる通り, n=15まで頑張っても小数以下9桁までしか一致しません.
3.14を得るにしても外接でn=3, 内接でn=4までかかります.
〆
一番有名であり, かつ四則演算と平方根のみで完結するため手計算でも出来ないことはないやり方ではあります.
今回は正六角形からやりましたが正四角形からでも可能です.