当たり前のように思えるそれが, ある条件を満たすと覆ってしまうのは数学ではよくあります.
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直感的な「確率」
一般に理解されている「確率」と言えば以下のような表現でしょう.
[定義:直感的確率]
全事象 とその部分集合 , 根源事象 とし, や などが起こりうる数を などと書くことにすると, が起こる確率 は
多少の表現の違いこそあれ, こういうイメージであろうと思います.
無限集合でも成り立つか
では上のような定義は無限集合であっても通用するのでしょうか?
試しに以下のように定義してみましょう.
は自然数 の部分集合とし, を のクラス(分からなければ集合を要素とする集合でも良いです)以下を満たすようなものとします.
(厳密にはクラスは「集合を要素とする集合」ではありません)
…(1)
( は集合 の要素の個数のことです)
とすると, 以下が成り立つことがわかります.
任意の について
さて,
であることから任意の自然数 について
が言えます.
一方 でしたから,
であるはずです.
このように, 演算の順序によって得られる値が変わってしまいます.
〆
アキレスと亀などをはじめ, 我々が日常的にイメージしたり直感的にこうであると思っていることは, 無限という概念が絡むと簡単に崩壊してしまうんですね.
結果, 今回定義した「確率のようなもの」は(公理的)確率論における確率空間を満たしていないことになります.