19号の途中から28号のうち, 日本に接近および上陸したものと接近こそしなかったもののそれなりに近づいたものをまとめました.
調査対象とデータの取得法など
以前紹介した通りですが, 調査対象は
- 中心気圧
- 気象庁
- ECMWF(欧州中期予測センター)
- GFS(アメリカ国立気象局環境予測センター)
- 最大風速
- GSM(全球数値予報モデル)
- JTWC(米軍≡台風警報センター)
になります.
また各々の性質は以下です
- 気象庁:熱帯低気圧と判断されると公式ページにて3時間おきに更新, 接近~温帯低気圧までは1時間おきに更新
- ECMWF:windy.comで確認
- GFS:同上
- GSM:気象庁のそれに同じ
- JTWC:Tropical Cyclone(熱帯低気圧)と判断されると公式ページにて6時間おきに更新
ECMWFおよびGSMは上記の通りのため, データ収集の時間間隔にどうしてもバラツキが生じます.
台風19号
台風19号については上陸前後にデータ収集を始めたため途中からになります.
そもそも今回の記事を投稿するきっかけは「気象庁の発表するデータに違和感がある」だったためです.
画像でも分かる通り数日に渡って中心気圧が915hPaのまま(前後で接近・上陸しているため更新ペースは1時間)というのは流石に考えにくいと個人的に気になったからです.
画像の通り, 欧州ECMWFや米GFSとかなりの差のある時間帯が多く見られます.
特にGFSのそれは「楽観的」に見えます.
上陸後は3つともだんだん値が近づいていき, 最終的に数hPa程度の差まで縮まり, 温帯低気圧になりました.
気象庁が途中で終わっているのは10月13日11:00に温帯低気圧へと変わったためで, それ以降気象庁は更新しないためです.
EMWFおよびGFSについてはどちらも低気圧として表示されなくなるかこちらの判断で収集を停止しています.
また19号の時点では最大風速の調査を失念しており, 画像化はしていません.
仮にECMWFの各データが0hPaであるとして気象庁およびGFSの換算値をグラフにすると上のようになります.
当然ですがGFSより気象庁の方がより近いことがわかります.
台風20号
続いて台風20号です.
これ以降は最大風速についてもデータ収集しているため, 中心気圧と合わせて画像化しています.
またわかりやすいよう中心気圧のグラフを上下逆にしてあります, 気圧が小さいほど勢力は概ね大きくなるためこの方がイメージしやすいでしょう.
結果を見ると, 完全ではないですが中心気圧・最大風速共にある程度の相関が確認できます.
とはいえ中心気圧と最大風速が完全に相関することはまずありえません, 各々の気象状況や場所(海上である, 上陸しようとしている, 上陸中である等々)によって異なる影響を受けるためです.
ECMWFでの値を0hPaとした時の換算値で見るとやはり上陸前後で顕著な差が確認できます.
最初の画像でも確認できますが21日昼間あたりのECMWF自身のデータ推移に影響して他との差が生じています.
[気象庁発表]
- 2019/10/15 9:00:熱帯低気圧
- 2019/10/18 3:00:台風20号
- 2019/10/21 18:00:温帯低気圧
台風21号
次は台風21号です.
台風19号に続き本台風は関東圏を襲い, 復旧の最中であった千葉県を再び被害をもたらしました.
この台風では3データが比較的綺麗に並んでいます.
最大風速もほぼ同じ登り方でピークも23日前後で重なっています.
見た目の相関らしきものは確認できても, データ上の差は台風上陸をほぼピークにどうしても生じてしまうようです.
各データセンターの測定手法が異なるという事情もあります.
[気象庁発表]
- 2019/10/19 9:00:熱帯低気圧
- 2019/10/20 3:00:台風21号
- 2019/10/25 21:00:温帯低気圧
台風23号
今年最強と言わしめた台風23号です.
気象庁では中心気圧が最大で905hPaと発表されました.
ただ他の2データではECMWFですら950hPa程度に落ち着く結果となりました.
とはいえ最大風速では他より一段階強いものとなっており, 結果的に日本列島に影響のない位置を通過したとはいえ恐ろしい台風であったことは間違いありません.
流石にそれぞれの評価・測定法によるものか, 今回は特に気象庁とECMWFでの測地一の差は大きく, 最大で60hPaを超えました.
ここまでくるとどれを信じて良いのか決めかねますね.
[気象庁発表]
- 2019/11/02 21:00:熱帯低気圧
- 2019/11/03 0:00:台風23号
- 2019/11/09 9:00:温帯低気圧
台風25号
台風25号です.
こちらも日本列島に影響を及ぼすことなく温帯低気圧となりました.
台風23号と同じく上陸することなく消えた台風ですがこちらは気象庁とECMWFとの中心気圧差がかなり小さいことが確認できます.
ECMWFとの差でグラフを取ってもやはり気象庁のグラフはせいぜい25hPa程度の差に落ち着いています.
ちなみに抜けのある箇所が散見されますがこれはECMWFおよびGFSの少なくとも一方が抜けており計算不能であることによります.
データの抜けというのはここではwindy.com上で低気圧であると見なされず低気圧表示されていないことを意味しています.
また就寝時でデータが取れていないことによる影響もあります.
[気象庁発表]
- 2019/11/12 6:00:熱帯低気圧
- 2019/11/12 15:00:台風25号
- 2019/11/18 3:00:温帯低気圧
台風26号
こちらは台風26号です.
やはり沖縄諸島を除く日本列島に影響はほぼありませんでしたが, 特徴的であったのは発生後フィリピンに向かい, 上陸寸前で停滞してしまったことですね.
その停滞具合が上のグラフでもよくわかります.
JTWCが警告を出してから8日間程度, 気象庁が熱帯低気圧と発表してからですら1週間程度フィリピン東沖に居座り続けました.
その後ようやくフィリピン-台湾沖に抜け, わずか2日程度で温帯低気圧に変わってしまいました.
この台風26号によってフィリピンでは約1万人が避難, 死者も出てしまいました.
特異な台風であったせいか, 各データの気圧差も非常に小さいものとなりました.
[気象庁発表]
- 2019/11/12 6:00:熱帯低気圧
- 2019/11/13 9:00:台風26号
- 2019/11/20 9:00:温帯低気圧
台風27号
こちらは台風27号です
発生位置と進路から日本列島に近づく予想となりましたが流石に11月下旬ということもあり勢力を強める程度は低く, 宮古島周辺で熱帯低気圧となりました.
南洋の暖気を吸い込んで大型化する予想もありましたが結果は画像の通りです.
全体の変化が30hPaを大きく下回った結果, データごとの差も小さく収まっています.
[気象庁発表]
- 2019/11/19 9:00:熱帯低気圧
- 2019/11/20 9:00:台風27号
- 2019/11/23 3:00:温帯低気圧
台風28号
最後は台風28号です.
本台風はやはり日本列島に影響はほぼありませんでしたが台風26号で被害を被ったフィリピンを再び襲うことになりました.
26号と比べこちらは一定の速度で通過していきましたが中心気圧・最大風速共に大きい違いがあります.
[気象庁発表]
- 2019/11/25 15:00:熱帯低気圧
- 2019/11/26 9:00:台風28号
- 2019/12/06 3:00:温帯低気圧
〆
米JTWCは24時間以内に熱帯低気圧および台風となる可能性のある低気圧を警告しています.
その中には途中で解除されるケースもあります, その一つが11/29 15時に警告, 12/4 17時頃に表示が無くなったこの95Wです(台風になっていないためJTWCによる番号付けである95Wという名になっています).
時期や位置, 気象状況次第ではこのようなことが起こりえます.
ちなみに記事執筆時には98W(INVEST)という台風の卵があり, 21日15時に気象学により熱帯低気圧と判断されました.
しかし現実として台風自体は一年中発生しています.
気象庁のページを見れば分かる通り, 台風の年内発生日時がもっとも早かったのは今年2019年の1月1日, もっとも遅いのは2000年の12月30日です.
これは上陸や接近云々でなくあくまでも「発生した」日時です.
一部サイトやブログなどで発生しただけで煽る方がごくまれにおられますが発生しただけでは評価は難しいです.
それは大国の進路予想や上記の中心気圧・最大風速の推移が必ずしも一致しないことからも想像できます.
「○○年に一度」的な表現も, 例えば台風関連であれば統計情報は1951年からしかありません, つまり70年分も無いということです.
一週間後の天気も高確率で当てることが難しい現在, そのような表現が正しいかどうかは一考の余地があります.
追記(データの散らばりについて)
各々で掲載した, ECMWFにおける中心気圧を0hPaとした気象庁および米GFSのデータの各台風ごとの二乗平均平方根(RMS)は上の結果となりました.
台風19号はデータが中途半端であることから参考にはなりませんが台風20,23号を除いて気象庁のデータが(ECMWFと比較して)相対的に散らばりが小さく収まっていることがわかります.
台風20号については気象庁とECMWFのピークにズレが生じたため, 各々の乱高下とも相まってGFSと比べて散らばりが大きくなっています.
台風23号は気象庁の発表したデータが他と比べ異常に低かった(最低で905hPa)ことが影響しています.
いづれにしろこれらのデータで分かる通り, 実況値であっても各々の定義や測定方法によって値が明確に異なります.
余裕があれば気象庁だけに頼らず他の情報も合わせて判断するのがおすすめですね.