もう一人のY君

主にiPhoneのショートカットアプリのレシピやTipsなどを書いています. たまに数学の記事も書きます.

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【数学】数学は役に立つのか

mathematics is useful

 良くも悪くも永遠のテーマの一つですね.

 なのでこれを読んでもらって解決する保障はありません.

 

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数学は将来役に立つのか

 こんな質問に立ち会ったとき, しばしばその返答に「論理的思考を養う」が取り上げられます.

 しかし我々は学校で学んだ算数や数学によってそれを養ったのでしょうか?

 論理的思考を養うのに良いと言う反面, それが結果的に本当なのか, 目に見えて, 何らかの結果を伴って「具体的に」こうこうであると答える方を見聞きしたことは(僕は)殆どありません.

(そもそも人の行く先は様々ですからそんな理想的な答えがやってくるなんてありえませんけどね)

 

 とは言え社会人となって「あの時勉強しておけば良かった」と後悔する方がいるのは, それはそれで事実です.

 そう思う方の多寡はさておき.

 

 

説明する力

 初等時はただひたすら計算問題を解くばかりですが, 中学高校と進学するにつれ, 証明問題のような計算以外のものが登場します.

 

 これらは自信が納得すれば済む訳ではなく, 「相手が理解してくれるかどうか」が影響します.

 

 数学に「計算能力」が重要なのは言うまでもありませんが, 進学するにつれ求められる能力はそれに留まらず, 記号や用語を使いこなす力や相手に説明する能力など複数存在します.

 そしてこれらすべてが, 形は違えど数学に限らず将来役に立つ力となるのです.

 

 勉強ができても, それを正しく相手に伝える事が出来なければ意味がありません.

 これまでの受験偏向教育はこの力を育てる事に目を向けませんでした.

 

 21世紀になり, このように学問を学ぶ上で求められる能力を整理し, それを「キー・コンピテンシー」などと呼んでいるようですが, 日本で真っ当に採用するのは何時のことでしょうね…

 

 この考えはさして難しくはありません.

 言うなれば少し意味は違いますが「ディベート」のようなものであり, ただ無為に解いて終わるのではなく, 問題の解答を発表したり議論したりするのです.

 アメリカや欧州では実際に行っているそうですね.

 

 現在日テレで放送中の「先に生まれただけの僕」で櫻井翔が扮する商社転向の校長が提案していましたので知っている方もおられるでしょう(同時に教育方針を転換する難しさも知ったことでしょう).

 

 これは数学の, 教育の起源である「リベラル・アーツ」に他ならず, つまり当時の

 

  • 論理
  • 文法
  • 修辞(しゅうじ, 表現力などの意味です)
  • 音楽
  • 算術
  • 幾何

 

の7部門の一部を指します.

 

 数学はそれ自体が言語に喩えられますが, 喩えでなくとも「説得力」を要するために結局は国語力も必須と言えます.

 進学すればするほど, それが如何に重要であるか, そしてそれが如何に難しいかを体験する事でしょう(「受験数学」であるうちはそれを感じることが難しいです).

 

 でもよく考えると, いざ社会に出てからもその理屈は似ています.

 

 「それ」をまず自分が理解し, そして相手に理解できるよう説明する…

 自分が分かってても相手に伝わらなければコミュニケーションにすらなりませんよね.

 

 質問サイトでも散見されますが, 自身が理解していてもその質問文では回答者側が理解できない, あるいは読み手によって解釈が異なる表現であるケースがあります.

 

 これらが「国語力」によって簡単に解決する一つの要素になります. もちろん質問した内容自体を本人が理解しているかどうかも気になるところです.

 

 

なぜ勉強するのか

 これまでは余りに受験偏向で, (既に廃止されましたが)それにゆとり教育が絡み, 一体何のために数学教育を行っているのかが問われる状況でした.

 高校へ進学するため, 〇〇大学へ合格するため, 多くの学生は, 数学に限らず進学のため, 大卒という「ラベル」を目的に勉強しているのです.

 あくまでも「進学」に対する目標であり, その先のそれではありません.

 「数学って将来役に立つの?」という疑問が生まれるのはある意味では必然でしょう.

 

 進学した後は兎も角, 大学を卒業した後はどうするのか.

 これまでの積み重ね は一体その後何に生かされるのか.

 手段と目的が逆転していないか.

 何のために進学するのか.

 「皆が行くから」?

 

 

数学はなぜつまらないのか

 「相手に伝える」能力は学生だけでなく教師にも求められる能力です.

 日本の教育は基本的に教師→学生の一方向なので, 一度躓けばそれがジワジワと積み重なって結果に影響します.

 数学は良くも悪くも「積み重ね」なので, 暗記に頼ったりただひたすら解き続けて慣れる他ない…という方が少なくありません.

 

 もちろん全体の流れをじっくり説明すればそんな「数学嫌い」はかなり減ると思うんですが, 時間は有限ですから授業でできる「説明」にも限りがあります.

 

 本来であれば数学もまた互いに説明し合う, 議論し合うべきです.

 自分で考え, 議論し合う事でその真偽を確かめるのもまた教育のため, 引いては個々人のためになります.

 

 そう言う意味では「論理的思考を養う」は強ち間違ってはいないでしょう.

 現に日本は学生のうちに「議論」する機会は殆どありません.

 そういう意味では質問サイトというのは議論し合える貴重な場なのかもしれません(正しく利用すればの話ですが).

 

 

国際化の波

 ここ暫くの流れで, 国際化に対して英語教育に力を入れる事が多いと思います.

 それはそれで構いませんが, まず日本語による語彙力や説明する能力を養わなければ, いくら英語を学んだとしても, 日本語ですら説明できないものを英語で伝えられる訳がありません.

 まして日本の学校で学ぶ「それ」はネイティブでなく何だかんだ頑なに受験を前提にした「学術英語」です.

 義務教育でやってきた国語だけで日本語がペラペラになるか…という話ですよ.

 

 先の「議論」も然りで, 国際化を謳うなら, 日本はいい加減受験偏向から本当に脱却しなければ口だけのまま世界から取り残されてしまうかもしれません.

 日本って, 海外を参考にすること自体は他の国でもありますから良いとして, 中途半端に採用してそれまでの悪いモノ, 足枷となるものを棄てないから結局台無しにしてしまうんですよね…

 

 

 何をするにも, 伝えたいことを相手に正しく理解してもらうにはつまるところ数学だ英語だ…の前に国語力という事ですね.

 そしてこの力は学問以前に日常生活で無くてはならない力です.

 

 大学受験までならその力に欠けていても何とかごり押しで通用しますが, 大学入学後はもう通用しません.

 

 まして「相手に正しく理解してもらう能力」は学問に限らず日常にも有益な能力です.

 

 その能力が一定以上あるならば, 例えば

 

  • { \displaystyle \sqrt{6} } を整数にするといくつですか?
  • { \displaystyle x^4-4 } を因数分解してください

 

と言った愚問はあり得ない訳です.

 

「数学って将来役に立つの?」と言う立場でも言われる立場でも, その答えを相手に伝えられるかどうか, ちょっと考えてみてはどうでしょうか?

 

 それこそこれ自体を議題として議論し合うのも有益でしょうね, 当然数学だけでなく学問そのものもです.