iPhoneに限らず、バッテリーの消費が激しいと感じて不安になる人は少なくないと思います.
それを受けてこれまで多くのインフルエンサーたちが「節約法」と謳っていくつか設定などを推しています.
しかし状況によってはこれらは逆効果になってしまいます.
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よく言われる「節約法」
公式では「節約法」といいつつ具体的な内容には触れていない…というより、そういう仕組みがあることを紹介しています.
それとは別に、SNSや動画サイトなどでしばしば挙げられる「節約法」のテンプレとして設定アプリから行う以下が挙げられます:
- 「アプリのバックグラウンド更新」をオフまたはWi-Fi
- 「バッテリー充電の最適化」をオン
- 「視差効果をオフ」をオン
- 「iPhone解析」「経路と交通情報」「"マップ"の改善」をオフ
- 充電の上限(iPhone15以降)
- Safariのタブを定期的に整理
- Appスイッチャーの履歴を消すのを控える(これは条件付きで誤り)
- 急速充電、無線充電、発熱
- バッテリー使用量の多い、あまり使っていないアプリを削除
- 「Apple IntelligenceとSiri」の「通知を許可」「アプリライブラリに表示」「共有中に表示」「視聴提案を表示」をオフ
- 位置情報を使用する各アプリの「位置情報の使用を許可」を「常に」以外に変更
他にもあるかもしれませんがパッと思いつくのはこのあたりです.
今回特に注目するのは「バッテリー充電の最適化」です.
バッテリー充電の最適化
設定アプリの「バッテリー」->「バッテリーの状態と充電」に進むと「バッテリー充電の最適化」の項目があります.
新品購入時はデフォルトでオンになっているはずです.
「バッテリー充電の最適化」は、各デバイスの充電や使用状況を学習することで、特定の条件を満たしたときにフル充電の時間をなるべく短くし、バッテリーの劣化を可能な範囲で防ぎ、長持ちさせる機能です.
その判断はそれまでの学習のもとOSが判断するため、常に行われているわけではありません.
またこの機能は充電条件が100%に設定されているときに限り利用できます、よって「バッテリー充電の最適化」と「充電上限100%未満」は両立できません.
片方しか使えないので気をつけましょう.
また、設定アプリの「バッテリー」の項目に、「システムからの提案」として「バッテリー設定が進行中」と表示されている場合があります.
これが表示されるのは主に以下の場合です:
- 新しいiPhoneを初回起動した後
- iPhoneを初期化した後
- iOSのアップデート直後
- バッテリー交換後
- バッテリー関連のセンサー情報の収集
これらの状況下では、バッテリーの健康状態を調べるためにデバイスの使用状況やバッテリーのセンサーデータ、学習フェーズ、充放電パターンなどを観測していると思われ、これをもとに「バッテリー充電の最適化」が行われます.
公式サイトにある通り、バッテリー充電の最適化には14日間以上に渡って行われ、その後も常に学習し、その時々で最適化が実行されるかを判断します.
バッテリーの最大容量やピークパフォーマンス性能もこの最適化によって正確に計算されます.
そのためiOSのアップデート後に最大容量などの値が修正される(キャリブレーション)可能性があります.
バッテリー充電の最適化が行われる環境
この最適化が機能するためには、一定の条件下で使い続ける必要があります.
日常的な使い方と充電
Appleは、日常的において最も安定した環境、つまり「自宅の就寝中の充電」を想定して最適化を設計しています.
そのため最適化が完了するには上記の通り最適化が完了するまでの14日以上の夜間に処理が行われることが理想で、使用データの学習のために十分な使用と充電が必要です.
毎回満充電する必要はないですが、した方が学習が進みやすく、処理の完了が早くなります.
これはバッテリーの最大容量や劣化を推定するのに、満充電がどのくらいなのかを学習させるからです.
そのため最低でも80%を超えて充電することが必要です.
最適化の学習が終わっていない状況で80%で充電をやめるなどを行うと、最適化学習がいつまでも終わらない場合があります.
位置情報サービス
上記にもある「日常的な場所」を学習させるため、位置情報の設定もオンにしておくと学習の完了が早まります.
最適化が完了するまでは設定アプリの以下の項目はオンにしておくと良いです.
- プライバシーとセキュリティ->位置情報サービス->位置情報サービス
- プライバシーとセキュリティ->位置情報サービス->システムサービス->システムカスタマイズ
- プライバシーとセキュリティ->位置情報サービス->システムサービス->利用頻度の高い場所
これらがオフの場合、オンのときと比べて学習が進まなかったり、非常に遅くなることで学習に伴うバッテリー消費が長期にわたり続く恐れがあります.
低電力モードまたは自動ロック
推奨環境という程ではないですが、最適化の処理を優先するために他の処理を制限するのも有効です.
ただし低電力モードがオンの場合自動ロックは強制的に30秒となるので、これらによって効率よく優先する場合はほぞ必然的に低電力モードが優先されます.
一方で低電力モードは一部の機能を制限するため日常生活での使用は推奨しません、なので例えば
- 日常生活→自動ロック
- 夜間→低電力モード
のように使い分けるといいです.
アプリのバックグラウンド更新
これもよくある「節約法」のひとつですが、バッテリー最適化の学習中はオンにしていないと学習や最適化が進みません.
しかし上で紹介した低電力モードはバックグラウンドでのアプリ更新や同期も制限してしまいます.
どちらの場合をオフにしたとしても最適化を致命的に阻害するわけではないですが、最適化を優先するならばアプリのバックグラウンド更新をオンにする方が良いです.
最適化が機能するまでに守るべきこと
以下の状況下ではバッテリー充電の最適化が行われている可能性があります.
- 新しいiPhoneを初回起動した後
- iPhoneを初期化した後
- iOSのアップデート直後
- バッテリー交換後
- バッテリー関連のセンサー情報の収集
「バッテリー充電の最適化」が実際に機能するには以下の条件を14日以上維持することが必要です.
- 自宅の就寝中の充電(理想は満充電、推奨80%以降、80%以下で止めない)
→複数日に渡り日中~夜間に最低80%以上まで安定して充電する経験をさせる - 夜間も電源を入れておく
→最適化は常に情報収集を行い、その解析や学習を夜間に行います。なので就寝だからといって電源を落としていると最適化の主要処理自体がいつまで経っても完了しません - Wi-Fi接続(推奨)
- 設定アプリ
バックグラウンドアプリの更新→オン
位置情報
位置情報サービス→オン
システムカスタマイズ→オン
利用頻度の高い場所→オン
Wi-FiやBluetooth→オン
iCloud写真の同期→オン
低電力モード→オン
自動ロック→「しない」以外
最適化が完了していない時点での「節約法」の実践は、最適化の進行を阻害して長引かせ、却ってバッテリーの減りの改善を遅らせる恐れがあります.
最適化の学習が終わるまでは我慢しましょう.
最適化の学習中のバッテリー消費
最適化の学習の多くは主に夜間に行われますが、データの収集自体は常に行われています.
ようは常に情報収集し、解析や学習は夜間に行っています.
最適化に伴う処理の優先度は他と比べ低く、またバッテリーの消費が抑えられたものになっているため、処理が終わっていないこと自体がバッテリーの消費に繋がることは少ないです.
ただし、何らかの要因で処理が止まって最適化の学習が持ち越されたり、80%未満の充電が続いたり、使用頻度が高すぎるなど、処理が遅延したり準備中が続くことが増えれば最適化の恩恵が受けられず、学習に要する期間もどんどん長引いていきます.
最適化の学習などに要するバッテリー消費は一日に数%以内らしいですが、中断などによる副次効果で意図しないバッテリー消費が起こる可能性はゼロではありません.
補足1:キャリブレーション
満充電などに拘るのをおすすめしないもう一つの仕組みがこのキャリブレーションです.
新規購入時やiOSの大型アップデート後は、バッテリーの残量表示と実際の電力量のズレを調整し、充電効率を改善する「キャリブレーション」が行われることがあります.
この調整が行われるには以下のような使用を通して実行されます:
- 端末が一貫したパターンで使用されている(夜間に充電→朝使用など)
- 満充電(100%)→空に近い(10%未満)までのある程度の充放電サイクル
- バックグラウンドでの学習
キャリブレーション自体はサイクル数(=充放電回数)1~2回分で行われますが、それを含めた最適化は14日程度なので結果的には後者に従うことになります.
キャリブレーションが行われないまま放置すると、バッテリーの残量表示がズレ続けるだけでなく、充電や使用のパターンが安定せず、却って消耗が早く感じる恐れがあります.
補足2:充電上限が機能しない?
たまに「充電上限を◯◯%にしたのにそれ以上充電されてる」なんて報告があります.
先ほど紹介したApple公式ページにこのような言及がされています:
充電上限が100パーセント未満に設定されている場合も、iPhoneはバッテリーの充電状態の推測精度を維持するため、ときどき100パーセントまで充電されます。
https://support.apple.com/ja-jp/108055
OSがこのような判断を下す可能性のひとつは、普段行わないようなタイミングですらキャブリケーションが必要なほど学習が未熟であるということです.
節約に徹したことで、却って充電上限や最適化の機能不全を起こしていると言えます.
これを解決するのは主に次の2つです.
- バッテリー充電の最適化をしっかり進める
・節約法を使わない「普段通りの使い方」をし、キャリブレーションが進むようたまに一晩充電しっぱなしにすることで満充電がどのくらいかを学習させる
・「日常生活における睡眠中の自宅充電」を学習させる
・充電上限は100%で - 「バッテリー充電の最適化」を諦めて充電上限のみ使う
「バッテリー充電の最適化」がオンのままだと学習しようとするので、敢えてオフにすることが必要です
〆
世間に喧伝される節約法は、聞こえはいいですが特定の条件下では噛み合わず逆効果になってしまいます.
特に機能するまで他の「節約法」に逆らわないといけない「バッテリー充電の最適化」は我慢が必要になってきます.
位置情報などの各種設定は「バッテリー充電の最適化」が済んでから行うようにしましょう、でないといつまでも最適化の学習が終わらず何日もダラダラと情報収集や学習によるバッテリー消費が続くことになります.
むしろ節約法への異常な執着は、バッテリー充電の最適化の学習を乱す要因になります.
最初の2週間程度は「普通に使う」ことを心がけましょう.